クロール習得を早める「接し方・支え方」実習での学びを生かした水泳指導の事例

Shiroです。今週から臨床実習が始まり、約3週間は文章中心の投稿になりますが、そのぶん私自身のコーチ経験や学生としての学びを丁寧に書き残していきたいと思います。

今回は、私がコーチとして長く関わり、たくさんの失敗と成功を経験させてくれた子(Aさんとします)のクロール習得の過程についてお話しします。

Aさんについて

初めてお会いした頃、Aさんはまだ別クラスで背浮きを練習しており、水に対する恐怖心が強い印象でした。級を一つ上げるのにも1年ほどかかっており、顔をつけてもすぐに上げてしまう。バタ足は腰が沈み、膝が大きく曲がる状態でした。

背浮きを習得し、グライドキック練習の段階で私のクラスに移ってきましたが、以前の癖は残ったままの状態でした。それでもAさんは一歩一歩努力を積み重ね、グライドキックと顔つけの板キックのテストをクリア。ようやく息継ぎなしのクロール練習に入れる段階まで到達しました。

当スクールでは、この時点でアームヘルパーを外し、ビート板のみで顔つけ板キックを行います。しかし、ここから先は道具による補助が大きく減るため、身体ひとつで浮くことが要求され、恐怖心が増す子も多くなります。Aさんもその傾向が強いタイプでした。

私のクロール指導の進め方

私は、クロールに限らず「まずはやってみる」ことを大切にしています。
最初に簡単な説明を行ったらすぐに、ヘルパーを着けた状態で7mチャレンジと称して7mだけクロールをやってもらいます。

この7mはグライドキックのテストの距離で、基本的に子供たち全員が到達できる距離です。ここで「現状でどこまでできるのか」「何が足りていないのか」を把握します。

うまく泳げる子は、そのままクロールに近い練習に移行し、よりきれいなフォームの獲得を目指します。
そうでない場合は、必要な要素を評価し、改善の優先順位を決め、段階的に練習を組み立てていきます。

Aさんの7mチャレンジの結果と課題

Aさんの初回の様子は次の通りでした。

  • スタート姿勢のまま身体が伸びずにスタートしてしまう
  • すぐに脚がプールの底につく
  • 腕は回るが腕が水中から抜き出せない
  • 頭を上げずに水をかける回数は最大2回
  • 頭が常に半分しか水中に入らず、浮力が安定しない

これらの背景として、私は次の仮説を立てました。

  • 浮力の補助減少による恐怖心(子供たちによくある現象)
  • スタート前に十分に息が吸えていない
  • 息を止めていることが苦手
  • 正しい動きのイメージ不足
  • 腕のリカバリーの誤解から非効率な動作が生じている
  • クロールができるだけの筋力がない

これらを検証するために、恐怖心の有無を聞いたり、浮力の補助をいくつかのパターンで試したり、呼吸について声かけで調整してみたり、陸上で動きの確認を行ったり、介助しながら力の入り方を評価してみるなど多角的に分析しました。

その結果
👉浮力喪失の恐怖
→腰が曲がり抵抗が増大
👉正しいかき方のイメージ不足
→いくら水をかいても進まない&横から腕を上げてしまう
→力み
→ 姿勢が崩れ抵抗が増大
👉呼吸も苦しく、頑張って動かしているから、ゴール地点が気になる
→頭が上がる
→抵抗増大&腰から下が下がる
→さらなる抵抗増大

以上がAさんのクロールを複雑に妨げていると整理できました。

改善のために行ったこと

これまでの分析から私が最優先にしたのは恐怖心の低減です。これが行われないと、練習そのものも阻害されてしまいますし、正しい動作の獲得の土台となるからです。
そのため、短期の目標として以下を個人的に設定しました。

「正しい動作を、安全かつ安心できる環境で習得し、あらゆる手段を使ってでも7m泳ぎ切る」

まずはこの目標の前半部分を基本方針とし、以下の順序で指導を行いました。

①十分な浮力のある状態で成功体験をつくる
ビート版とヘルパーを使用し、介助しながら7m泳ぐ練習を繰り返しました。
力み具合や手の形を確認し、7m泳ぎ切るという成功体験を積ませながら正しい動作を定着させていきました。

→ビート版とヘルパーの浮力補助があれば自力である程度正しい動作で進める範囲が広がってきた。しかし浮力補助が減ると腕を横から上げてしまう
②補助を徐々に減らして自分で進みながら浮くことを身に着ける
補助を減らした状態で、
「何回顔を上げちゃってもいいし、いくらでも止まっていいから、まずはひとかきだけ完璧にやろう」
と声かけを行いながら1つの目標に集中して恐怖心をやわらげつつ反復練習を行いました

→浮力を減らしても、声かけ直後は正しい動作でしっかりと進めるようになってきた。しかしヘルパーを外すと腰が引けてしまう癖は残っていた。
③徒手介助で目的の動作を引き出し、完成形を学習してもらう
徒手的に浮力調整を行いながら、最後まで水をかき切る動作を習得。Aさんの状態に合わせて浮力を補助することで腰をまっすぐに整えながら、最後まで水をかき切るように介助をくわえることでスピードを出せるように改善しました

最終的に、Aさんがクロールで7mを泳ぐために要した期間は1年と長期間でしたが、Aさんにとっては大きな成長であり、私自身にとっても確かな学びを得た出来事でした。

まとめ

Aさんの例は、正しく分析を行い、原因を究明しアプローチを続ければ確実に前進できる、ということを改めて実感させてくれました。

そして今回私の用いた指導方法は実はリハビリの基本そのものなんです。

動作分析→仮説→評価(検査)→制限因子の特定→リハビリプログラムの立案実施→再評価→必要に応じた修正

この問題解決のプロセスは、子どもの泳ぎを指導する上でも患者さんへのリハビリを実施する上でも変わりません。

理学療法士や作業療法士の強みはこの原因を見抜く力にあると私は信じています。「歩けない⇒歩行練習を増やす」、「バランス能力がない⇒バランストレーニングだけをやる」といったことではなく、実際の動作のさらに深い原因まで掘り下げてそこに直接アプローチすることができるというのは他の専門職とはまた違った武器であると感じています。

今後もコーチングと理学療法の接点を見つけながら投稿を続けていきます。
お読みいただきありがとうございました。

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