急性期での臨床実習で学んだ「変化に合わせる」技術。私を支えてくれた実習のお供とは

Shiroです。今回は急性期病棟でのがんリハビリの実習体験について綴ります。 担当したのは、悪性リンパ腫の化学療法(抗がん剤治療)のため入院されたAさん。日々刻々と変わる全身状態の中で、いかに「今、最適なリハビリ」を提供するか。その葛藤と、私を支えてくれた「あるアイテム」についてご紹介します。

症例紹介

まずはAさんについての簡単なまとめを行います。

  • 身体情報:下肢MMTはALL4、立ち上がりでの上肢代償著名、足関節背屈制限(ROM10°)、転  倒リスク大
  • ホープ:現状の歩行能力の維持
  • ニーズ:歩行含めたADL維持、筋力の維持・向上

以上のような筋力にも余裕がなく、可動域も歩行にギリギリ…という患者さんに私は以下のプログラムを立案しました。

  • 歩行練習→ADL維持、活動量確保、歩行評価
  • 筋力増強訓練(立位・座位・臥位で下肢の筋トレ数種)→動作の代償軽減、転倒リスク軽減
  • 下腿三頭筋ストレッチ→関節可動域改善

プログラムは基本的なものですが、同じ目的のプログラムでも負荷量を調整できるよう複数種類を用意し、それを組み合わせたものを体調良好日・普通日・不良日の3組作り、患者さんの全身状態に合わせて柔軟に対応できるようにしました。

退院時には筋力の向上は認められませんでしたが、可動域の向上は見られ、家族への退院時指導を行い私の実習は終了となりました。

臨床実習で学んだ3つの大事なこと

①全身状態に合わせた柔軟なプログラム立案

抗がん剤治療にはさまざまな副作用があり、血液データの変化を追いながら患者さんの体調を鑑みてリハビリの内容と負荷量を調整していく必要があります。

血液データによっては筋トレが禁止されたり(血小板の減少)、患者さんが疲れやすくなったり(貧血)、患者さんの状態によっては悪心でご飯が食べられず、栄養状態が低下することでリハビリが制限されることもあります。

日によっても患者さんの体調は大きく変化し、「昨日の治療プログラムが今日は同じプログラムを使えない」ということがよく起こります。

そのため患者さんの全身状態に合わせたプログラムの調整と血液データの予測に基づくプログラム更新がリハビリの質を高めるための鍵になります。

②認知症の方への「体に伝える」指導法

患者さんは既往に認知症があり、認知機能に関しても非常にムラが大きくありました。

MMSEでは20点ですが、疼痛部位の左右が一貫しなかったり、入院中にお願いした自主訓練を次の日には全く覚えていなかったり、介入中の指示が通りづらかったりと経験の少ない私には非常に苦戦しました。

私は指導者の助言を受けながら患者指導は「課題を少なく、家族に話す」という工夫をとり、筋トレの起立着座練習は「隣に座って脚を沿わせて自分の動作を体で伝える」という方法を取りました。

工夫の結果、着座の際に膝を伸展させながらドスンと座っていたところから、膝を曲げてしっかりと目的の筋肉を使って訓練を実施することができました。

言葉での指示が通りにくい時、自分の動きで患者さんの動作が劇的に改善。教科書にはない、現場での工夫の重要性を学びました。

③動作の常時分析がリハビリの安全性とプログラム立案の鍵になる

リハビリ中、患者さんはさまざまな動作を行います。リハビリ室までにいくにも、起き上がり、立ち上がり、歩くという動作が必ず入ります。

Aさんは立ち上がる際に上肢の代償が顕著であり、臀筋群と大腿四頭筋の筋力低下が特に大きな問題となっていると判断し、筋トレのメインターゲットをその2つに絞りました。

それによってプログラムに優先度がつき、患者さんの全身状態が悪く少ししか筋トレができない日でも、「大腿四頭筋にはアプローチできてるからここまででいいな」と安心できますし、患者さんの安心感につなげることもできます。

ふとした瞬間の動作だとしても常に分析をかけていくことで、歩行中であれば転倒しかけた時の早急の介助につながったり、プログラムがよりクリアになったりします。

実習で感じた臨床力の一端

臨床実習でしか学べないこととしてもう一つ、「実習中は『素早く正解にアクセスする』ことも実力のうち」ということを今回の実習で痛感しました。

実習中はもちろん教科書やネットは使えません。しかし、血液データの正常値やリハビリの制限への基準などはなかなか養成校では詳しく扱わず、覚えている学生も少ないと思います。

私自身もその1人で、「今日の血液データでリハビリってどこまでやっていいのか」という疑問に直面することが多くありました。

そこで今回の実習から実習のお供として使ったのがポケット手帳シリーズの『PT評価ポケット手帳』です。

こちらは実習先で他の実習生が使っており、私もいいなと思い購入しましたが、これが大正解。正直、ROMの参考角度や基本軸・移動軸など全ては覚えきれていなかったり、細かな評価方法の定義が曖昧なものもあったので、サッと開いてサッと確認できるというのは安心感が違いました。

もちろん頭の中に知識がある状態が望ましいですが、現場で「正確な判断を即座に下す」ためのバックアップとして、この一冊は実習生の必須アイテムだと感じました。

まとめ

今回は臨床実習で症例さんを通して得た経験と学び、新たに得た実習中のお供について記事にしました。急性期病棟での実習は「状況を見て即座に対応する」ということが多かったように感じます。今回得た「変化に合わせる視点」は、水泳コーチとして選手のコンディションを見極める際にも必ず活きると確信しています。

来週からはまた水泳多めの記事になるかと思いますのでそちらも読んでいただけると幸いです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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