Shiroです。先日、私のみている選手がまた一人、JO出場を決めました。本格的に選手にコーチとしてかかわるようになってから1年半ほどですが、選手の頑張りが着々と実を結んでいることを実感する日々です。
さて、今回は選手の練習に欠かせないフィンについて書こうと思います。現場でも「フィンって何を選べばいいんですか?」という質問が良く来ます。フィンは決して安くはないですし、負荷がかかる以上怪我も心配で、フィン選びに失敗したくないですよね。
今回は「こどもが競泳を本格的に習い始めた」保護者様向けに、運動学や解剖学の観点から、選手の特徴別におすすめのフィンをピックアップしました。現役選手の方や指導者の方にもためになる内容にしていますので、ぜひご一読ください。
その後にフィンを使用した日にはぜひやってほしい陸トレを紹介しようと思います。
なぜフィンが競泳の練習に必須なのか
まず、フィンとは水泳を競泳として習う際に必ずと言っていいほど使用する道具のうちの1つです。道具を使用することで練習の幅が広がり、効率的な練習を行うことができます。フィンを使う目的としては以下があります。
- キック力向上:自分の足より広い面積で水をとらえることで水の抵抗が増し、足首や膝を動かすために必要な力が増大します。そのため下肢の筋肉への刺激が増加し、特に筋持久力の向上が見込めます。
- ドリル練習の補助:力を抜いても推進力を得ることができるため、姿勢が作りやすく、ドリル練習にも使用することができます。
- キックの矯正:フィンの形状によってはキックの方向をサポートし、フォーム改善の補助としても役立ちます。
- 普段より速いスピードの体感:フィンを使うことで自分では到達できないスピードを体験することで、脳にある自分の泳ぎのスピードの基準を上げ、フィンを外しても速く泳げるようにしてくれる可能性があります。(オーバースピードトレーニング)
このようにフィンは速くなるために効果的なツールであり、多くのチームで標準的なアイテムとして活用されています。その一方で、選び方や使い方を間違えると、怪我の要因にもなりえます。
運動・解剖学的視点で見る「なぜフィンで身体を痛めるのか」
多くのコーチは痛みが出た際は「フィンを外す」などの消極的な選択をしがちですが、痛みの背景には明確な原因があることがほとんどです。
- 強制的な足関節底屈による挟み込み(インピンジメント) フィンが受ける水の抵抗により、足首が足の裏の側に無理やり伸ばされます(足関節底屈)。この時、足関節後方で骨や軟部組織が衝突し、後方インピンジメント症候群につながることがあります。
- ジュニア期の「成長軟骨」への過負荷 特に小学生は骨がまだ柔らかい時期。硬すぎるフィンは、かかとの痛み(シーバー病)や膝のトラブル(オスグッドシュラッダー病など)の引き金になります。
- 「レバーアーム増大」の罠 長いフィンは、単純に足が長くなる(レバーアーム増大)一方で、運動学的に足首への回転トルク(負荷)を増大させます。筋力が追いつかないうちに長いものを使うのは、重すぎるダンベルを振り回しているのと同じです。
理学療法学生の考える「フィンの選定基準3選」
前書きのようにフィンの選び方を聞かれた際に、おすすめのフィン自体を紹介することもありますが、サイズや色など、怪我の予防以外にも重要な要素はあるので、基本的には私は以下の選び方を答えます。
- 長さ(ショートorロング) フィンには短いものと長いものがありますが、こと競泳の練習においては私は圧倒的にショートをお勧めします。フィンの長さはキックのテンポに大きくかかわり、短いほど実際のレースペースに近いテンポの速いキックを打つことができます。また、平泳ぎの練習にも使用可能となることや、レバーアームが比較的短いことで関節への回転トルク(負荷)が抑えられ、安全性が高くなることからジュニア選手には短いフィンを買ってもらうように勧めます。実際に私のチームでは全員がショートフィンを使用しています。
- 材質 フィンの材質は「フィンの柔らかさ」を決める大事な要素です。主要な材質にはシリコンとラバーがありますが、ジュニア選手にはシリコン製のものを勧めています。シリコン製フィンは、その低刺激性と高い柔軟性により、現代の競泳トレーニングにおける主流となっています。シリコンはラバーと比較して素材自体が柔らかく、足の形状に追従しやすいため、キックの切り返し時に発生する急激な負荷を吸収し、足首や膝への衝撃を緩和します。また、シリコンは耐塩素性に優れ、長期間の使用においても硬化しにくいため、長く使えるというのも魅了のひとつです。
- 形状 最新のフィンには足首の内外反(ねじれ)を抑制し、流体抵抗を抑える設計が取り入れられています。キックの向きを整えるのを補助してくれる左右非対称設計や、逆V字構造、足首の固い子供でも効率よく水をとらえることのできるように作られた傾斜設計(案クルドブレード)などがあります。形状はそれぞれに良さがあり、練習の目的によって求めるものが違うため、こちらで特におすすめの形状を決定することはありませんが、フィンを練習で使用する目的を話したうえで簡単な説明をすることはあります。
結局どのフィンを使えばいいの?
ここまでフィンについて少し難しい話をしてきましたが、結局どのフィンを選ぶのが正解なの?と思ってしまいますよね。そこで今回は○○な人向けおすすめフィンをピックアップしてみました。フィン選びの参考になれば幸いです。
| 長さ | 材質 | 形状 | おすすめ商品 | |
| 初心者 | ショート | シリコン | 柔軟性・フィット感重視 | ハイドロテック2 (ソフト) |
| 中・上級者 | ショート | 高剛性シリコン | 左右非対称・逆V字構造 | DMC Elite Max |
| ジュニア選手 | ショート | エクストラソフトシリコン | 軽量・ドリル向きの形状 | ハイドロテック2 (エクストラソフト) |
| 足首の硬い方 | ショート | ソフトシリコン | アンクルドブレード、楕円形 | ハイドロテック2 (ソフト) FINIS PDF |
【ハイドロテック2】
初心者・ジュニアスイマーの方にはハイドロテック2が最もおすすめです。俗にいう「ハイドロ」と呼ばれるものですね。特にジュニア選手では成長軟骨への過負荷が最も怖いので、子どもの柔らかい関節に合わせて開発されたエクストラソフトタイプが最も適していると思います。
【DMC Elite Max】
こちらはプロも愛用する有名なフィンですね。私も現役時代の2代目にはこちらのメーカーのフィンを使用していました。高剛性のシリコンモデルが存在し、高い反発力を有しつつ、側面の逆V字構造(Reverse V-Rail)が練習を大きくサポートしてくれます。
【FINIS Positive Drive Fins (PDF)】
足首の柔軟性にどうしても不安のある方はこちらの選択肢も視野に入れてみてもよいと思います。
足首の柔軟性に難のあるスイマーがフィンを使うと、水を下に押し下げるような「フック」のようなキックになり、これが姿勢の破綻につながり腰や膝への負担が増加してしまいます。
そのため、アンクルブレードを採用することで足首が硬くとも効率的なキックを生み出し、楕円形であることからも推進力の効率化を図ることができます。
しかし、基本的には素材の柔らかさでカバーができるため上記のハイドロでもさほど問題はないかと思われます。
以上が今回私のお勧めするフィンになります。体感としては私のチームでもハイドロが人気なようですね。迷われた方はまずはハイドロ(ハイドロテック2)を選ぶのが良いと思います。
怪我を予防するためのケアと使い方
道具選びは非常に重要ですが、それと同じかそれ以上にケアと使い方も重要です、
まず第一に、買ってすぐにたくさん使わないこと。これが大事です。新しく買ったものをすぐにたくさん使いたくなるのはとても共感できますが、フィンの抵抗に身体の結合組織(腱や靭帯)が適応するまでには最低でも3~4週間の期間が必要であると言われています。特に筋肉よりも血流の少ない腱や靭帯の適応は遅いため、急激な負荷は慢性的な痛みや不調につながります。
また、ジュニア選手には急性期におけるアイシングも効果的であると言われています。練習後すぐにつよい痛みや熱感がある場合は踵や足首周辺をしっかりとアイシングすることが炎症の予防に有効であるとされています。
そして前回紹介したMobility on Stabilityを思い出してください。(読まれていない方はこちらからどうぞ)安定性がなければ機能的な運動は成立しえないのです。そのため足首周辺の筋トレなども怪我の予防の補助として効果的です。
まとめ
今回は聞かれることも多いフィンの選び方について、怪我の予防という点にフォーカスし、おすすめのフィンを紹介していきました。やはり有名どころは選ばれる理由が明確にあるのですね。
今回の記事が「フィンを買った方がいいと言われたけど何がいいかわからない」、「フィンを新しくしたいけど同じのを買えばいいのか違うものを買えばいいのかわからない」というような方のフィン選びの参考になれば幸いです。
選手の皆さんにも、ぜひフィンを正しく活用し、水泳と長く楽しくかかわっていただけると嬉しいです。



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