Shiroです。
今回も臨床実習中ということで、私自身のコーチとしての体験をもとにした一事例について綴っていきます。
今回は、フォームの再現性という視点での指導が、選手本人に深く刺さったと感じた事例についてお話しします。
Bさんについて
Bさんは選手コースに所属しており、同年代の中でもレベルの高い選手です。
50m自由形を専門としており、ジュニアオリンピック(JO)出場を目標に日々練習に取り組んでいます。
私個人としても、「今年のJOを狙える実力は十分にある」と感じている選手の一人です。
後半バテたという結果のみかた
Bさんは普段から練習に真面目に取り組み、高い強度のメニューもこなせています。
そのため、体力的に大きな問題を感じることはあまりありませんでした。
しかし、ある大会後、保護者の方から
「後半、すごくバテているように見えました」
というお話を伺い、レース映像を見せていただく機会がありました。
実際に映像を確認すると、確かに後半の失速は目立っており、苦しそうな泳ぎになっていました。
そこで私は、まず前半の泳ぎに注目しました。
すると、普段の練習時とは異なり、身体全体が上下し、抵抗を受けやすいフォームになっていました。
このことから私は、
「後半バテた原因は体力不足そのものではなく、前半で余計なエネルギーを使ってしまった可能性が高い」
と考えました。
もちろん、後半失速の原因は体力不足を含め多岐にわたります。
ただ、体力が足りないという結論で終わらせるのではなく
- どこで
- どのように
- いつもと違うエネルギーの使い方をしているのか
を見ていくことで、指導の方向性は大きく変わります。
「どうやったら体力ってつきますか?」
という質問は、選手本人からも、保護者の方からもよくいただきます。
その際、私は体力を高めるための原則や練習方法を伝えると同時に、
「体力がないように見える原因は、本当に体力だけなのか」
という視点も必ず共有するようにしています。
いくら体力があっても、前半でエネルギーを使い切ってしまえば、後半に失速するのは当然です。
そのためには、理想のペースと理想のフォームで泳ぐことが重要になります。
フォームの再現性が結果を変えた瞬間
ここで、Bさんの指導の中で印象的だったエピソードを紹介します。
ある大会前、私はBさんに次のような声かけをしました。
「キャッチのとき、8割はすごく良いけど、2割くらいで手が斜めになって水が逃げてるよ」
50mという短い距離では、ひとつひとつの動作の影響が非常に大きくなります。
そのため私は、泳ぎを細かく場面ごとに分けて見るようにしていますが、
このときは特別なことを言ったつもりはありませんでした。
しかし大会後、Bさんが提出してくれた振り返りには、
「シロコーチに言われた、何回かに一回手の向きがバラバラになるところを意識したらベストが出ました」
と書かれていました。
ベストが出た一番の要因は、間違いなくBさん自身のこれまでの積み重ねです。
ただ、フォームの再現性という視点を持ったことで、
レース全体の意識が変化し、ベストという結果につながったのではないかと感じました。
指導の中の一言で、選手の見ている景色が変わる。
そのことを改めて実感した出来事でした。
私が考える「フォームの再現性」
私がここで言うフォームの再現性とは、
「調子の良いときだけできるフォーム」ではなく、
疲れていても、緊張していても、レースのどの場面でも再現できるフォームのことです。
私は選手たちに、
「レースのどこを切り取っても、自分の理想の泳ぎができている状態を目指そう」
とよく伝えています。
体力をつけること自体は、誰もが気づくことが可能であり、本人の努力量に比例する部分も大きいです。
しかし、
「体力の問題に見える現象を、別の視点から捉え直す」
ことは、指導者が関わるからこそ提供できる価値だと思っています。
体力だけを見て練習を組み立てるのは、少しもったいない。
Bさんのように、フォームの再現性を高めるだけでパフォーマンスが安定する選手は決して少なくありません。
まとめ
今回は、フォームの再現性に注目した指導事例についてお話ししました。
この考え方は、実は理学療法とも深く共通しています。
理学療法士は「歩けるようになる」ことだけを目標にするのではなく、
- 安全に歩けているか
- 疲れすぎていないか
- 時間がかかりすぎていないか
- 身体に過度な負担がかかっていないか
といった実用性まで含めて評価・介入を行います。
結果だけにとらわれず、その質や再現性を見る。
この視点は、水泳指導においても非常に重要だと感じています。
今後も、コーチングと理学療法の接点を探しながら、
保護者の方や指導者、学生の方にとって少しでも参考になる発信を続けていければと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




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