Shiroです。前回まではコーチとしての経験を綴ってきましたが、今回は実習中ということで多くの学生がぶつかる「歩行分析」について、私なりの勉強法と現場での「泳法分析」への活かし方についてお伝えします。
理学療法士として避けては通れないのが動作分析。基本動作に注目する理学療法士として最も注目しやすいのが「歩行」であり、臨床実習中にも患者さんの歩行を分析する機会は数多くあります。
歩行分析の目的とは?
歩行分析とは、単に歩き方を診ることではありません。私は歩行分析の目的が動作制限因子の推定にあると考えています。
歩行分析で行っているのは、歩行の中にある違和感や異常(異常歩行)を見つけ出し、バランスが悪い原因と思われる箇所や、短い距離しか歩けない理由の仮説(あたり)をつけるということです。
この仮説を基に検査・測定を実施することで動作の制限を引き起こしている原因を確定させ、ひとりひとりに合った治療プログラムの立案につなげることができます。
つまり歩行分析は効率的な評価を行うための重要なスクリーニングツールとして捉えることができるのです。
実習を乗り切るための歩行分析への3ステップ①
①正常歩行を「ものさし」として頭に叩き込む
歩行分析への第一歩は、正常歩行を知ることです。正常歩行において、前額面(前後)や矢状面(左右)から各関節・筋がどのように動くのかを頭に入れておけば、実際の患者さんを目の当たりにした際、その「差」を違和感としてキャッチできるようになります。
また歩行に必要な関節角度を知っていれば、歩行前のROM(関節可動域)測定の結果から「右足の背屈角度が10°ないからクリアランスに支障が出るかもしれない」などと、歩行への影響を予測することができ、歩行の可否や転倒する方向など患者さんのリスク管理へも応用することができます。
正常歩行のおすすめの学び方:ビジュアルで理解する!
正常歩行を覚える際、私はこの本を活用しています。教科書として大学で購入した本ですが、各関節角度の変化や重心の軌跡がビジュアルで直感的にわかりやすく、その他の運動学全般に通用する情報が詰まっており、今では辞書のような存在です。実習では運動学の重要性を痛感することも多く、持ち運びには向かないものの、運動学について常に立ち返る先として非常に重宝しています。
またこの本と合わせて、自分や同級生の歩行を動画に撮りながらイメージを補完することもおすすめです。
実習を乗り切るための歩行分析への3ステップ②
②専門用語を実際に使用できるレベルまで理解する
”立脚期”や”ヒールロッカー”などの歩行に関する専門用語を正しく使えるようになると、指導者(バイザー)との会話が劇的にスムーズになります。
なんとなくで違和感をバイザーに伝えるよりも、セラピストの共通言語を用いることで、指導の方向が一般的な事実よりも患者さんを中心に向いたものとなり、結果として実習の中の学びが深まります。
また、実習施設によっては共通言語を正しく用いた会話ができるだけでも好印象を持ってもらえることもあるようです。
実習を乗り切るための歩行分析への3ステップ③
③疾患や病態ごとの「頻出パターン」を予習する
特定の疾患や病態には、よく見られる異常歩行のパターンがあります。
- パーキンソン病:小刻み歩行、突進歩行
- 脳卒中片麻痺:ぶん回し歩行
- 中殿筋筋力低下:トレンデレンブルグ歩行
もちろん疾患による異常歩行は必ずしも出るわけではなく、重症度や発症何年目なのかなどによって患者さんごとに異なる歩行があります。
しかしその中でも、よく見られる異常歩行を知っていれば、歩行分析に入る前に予測がつきやすく、特定が早くなる分他の部分の分析に時間を使うことができ、学生にありがちな「患者さんの歩行1回じゃ分析しきれない!」ということや、「もう一回歩いてほしいけど、この患者さんにもう1回は酷だな」という悩みを減らすことができます。
実習先で主に見せていただく疾患だけでも覚えておくと、実習中に歩行分析で困ることは減るのではないかなと思っています。
経験の蓄積が「見る目」を養う
最近読んだ「アイトラッキング(視線計測)」の研究で、面白いデータがありました。熟練した理学療法士は、学生に比べて「まず全体をパッと見た後に、制限の原因となっている部位を重点的に見る」という特徴があるそうです。
つまり、多くの症例を見て「パターン」を自分の中に蓄積し、瞬時に照合する能力こそがプロの技術なのです。実習は、そのパターンを蓄積できる絶好の機会です。
なぜならばバイザーは患者さんの安全性を担保するために転びやすい方向に立ちますが、学生は立ち位置を変えやすいため、様々な運動面から歩行を観察することができます。私も実習中は必ず矢状面と前額面からの評価を一回ずつはおこなうようにしています。
歩行分析の思考は「泳法分析」に直結する
1.理想のフォームを頭に入れる
2.選手の泳ぎと比較し、乖離している部分(違和感)
3.その原因がどこにあるのか、私の指導で修正可能なのか
4.最適な修正方法を提案する
第二回で紹介した「非効率なフォーム」の改善も、この思考プロセスに基づいています。理学療法で学ぶ「動作を診る目」は、プールサイドで質の高い指導を行うための強力な武器になると確信しています。
まとめ
今回は「歩行分析」をテーマに、実習での学びと水泳への繋がりを整理しました。 特に「正常を知る」ことは、すべての分析の土台です。そこから評価と経験を繋ぎ合わせていくことが、より良い実習、そしてより良い指導に繋がっていくはずです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




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