【平泳ぎ編】平泳ぎのバイオメカニクス-タイムを上げるために知っておきたいこと

shiroです。今回も水泳バイオメカニクス、【平泳ぎ編】です。

平泳ぎは他の泳法と比べると動きが独特で、
得意な人と苦手な人の差がはっきりと出る泳法です。

この記事では、論文をもとに、平泳ぎを分解・分析しながらわかりやすく解説していきたいと思います。

平泳ぎの特徴

平泳ぎが最も独特な泳ぎである理由はとてもシンプルで、
「スピードが大きく落ちる瞬間」が必ず含まれるからです。

Tiagoらによる研究においても平泳ぎは4泳法の中でも最も速度の変化が大きい泳ぎであることが示されています。

もう一つ、平泳ぎは推進力のほとんどがキックによって生み出されることが平泳ぎが特殊である理由と言えます。
こちらも2002年のHuubらの研究によって示されており、平泳ぎにおけるキックの重要性が報告されてます。

以上から、平泳ぎは手→体幹→脚と連鎖的に動いていく中で、

大きくブレーキがかかる→キックで一気に加速する→大きくブレーキがかかる…

といった現象が繰り返される泳ぎであると言えます。

したがって私が平泳ぎで重視するのは

  • 1回のストローク&キックでどれだけ進めるか
  • ブレーキの影響をどれだけ小さくできるか

平泳ぎのストローク相

平泳ぎの1ストロークを分解すると以下の要素になります。

  • アウトスウィープ(腕を外に広げる):ハイエルボーを作りやすくする
  • キャッチ:体の進む方向を決める
  • プル:上肢による推進力が最大になり、重心が斜め前に動く
  • インスウィープ(脇を締めて腕を閉じる):呼吸が行われ、リカバリーの準備となる
  • リカバリー:抵抗を最大限減らし、「のび」を作る

細かな筋肉に注目した様々な研究によると、ストロークの中で

  • 大胸筋
  • 広背筋
  • 脊柱起立筋群

が主導で複合的に働くことが示されています。

また、Didierの研究によると、
腕と足のタイミングが泳ぎの効率に大きく関係することが報告されています。

以上のことから、平泳ぎは他の泳ぎのように「強く進む」ために腕を使うのではなく、

  • 体の姿勢を整える
  • キックにつなげる準備をする

という役割が大きいと考えています。
特に重要なのは、
腕を使って体を前に倒し、次のキックが効きやすい姿勢を作ること
です。

キックのバイオメカニクス

キックはあまり相分けすることはありませんが、今回はあえて、分析するための分解を行っていきます。

ということで、以下の3つに分けました。

  • ひきつけ:踵をおしりに近づける
  • キック:水を後方外側に押し出す
  • インスウィープ:脚を閉じて抵抗を最小限にする

Bruceらによる研究では、
平泳ぎではキックの局面で最もスピードが上がることが示されています。

さらに、Ulrich Schleihaufの研究では、
水中での推進力は「押す力(抗力)」と「水の流れを利用する力(揚力)」の両方で生まれることが示されています。

平泳ぎのキック中に活動する筋肉については、複数の研究にて示されています。

筋電図を用いた研究では、平泳ぎのキックでは主に次の筋肉が働くことが示されています。

・ハムストリングス(太ももの裏)
 → 脚を引きつける

・内転筋群(内もも)
 → 脚を閉じて水を押す

・腓腹筋(ふくらはぎ)
 → 足首の向きを調整する

したがって、私はキックについて、以下のように理解しています。

平泳ぎのキックは
足の裏で水を押す力
水の流れを利用して身体を前にすすめる力
の2つを組み合わせて推進力を得ています

そのために重要なことは

  • 足の裏でしっかり水をとらえること
  • 足の向きや角度を調整すること

になります。

また、うまい選手ほど脚の外転(広げ具合)が最適化されており、
コンパクトな泳ぎをしている印象があります。(おそらく抵抗が減るレベルにまで運動学習が形成された。)

平泳ぎで起こりやすい障害(特に膝)

Peterらの研究によると、平泳ぎでは膝に特有のストレスがかかりやすく、
オーバーユース(過用)による障害が起こりやすいことが報告されています。

平泳ぎのキックでは、以下の力が膝にストレスとなってかかっています

  • 外反力:膝の内側が伸びる力
  • 外旋力:ねじれる力

水泳選手においては、これらが何度も繰り返されることで膝の内側に負担が蓄積しやすいと考えられています。

また、ここからは一般的に言われているようなことですが、股関節の動きが不十分であると、さらに膝を使って動きを補うようになり、
結果といて負担が増える可能性が指摘されています。

したがって、平泳ぎをするうえで、膝を守ることができる可能性があるものとしては

  • 疲れている時こそフォームを大事にする
  • 練習が終わるごとにアイシングなどのケアを行う
  • 股関節の柔軟性を確保しておく+そのうえでキックはコンパクトにする

などが考えられます。

キックをコンパクトにすることは、股関節が固い方が無理に行おうとすると、逆に膝へのストレスを高めてしまいますが、股関節に十分な可動域さえあれば、膝の動き自体が減り、膝への負担が減ると考えられます。

まとめ

今回は水泳バイオメカニクスの【平泳ぎ編】として、平泳ぎとはどういった泳ぎなのか、起こりやすい怪我はどんなものがあるのかなどを解説していきました。

平泳ぎはスピードが落ちる瞬間が必ずあり、キックでたくさん進む必要のある泳ぎと言えます。

これをしっかりと意識して、どの筋肉を使っているのか、どういう動作が正解なのかということを理解できれば、タイムの伸びはさらに良くなっていくと思います。

次回は【バタフライ編】になります。水泳バイオメカニクス編のラストになります。ぜひバタフライが得意な人も、苦手な人もご覧ください。

参考文献

Barbosa, T. M., et al.
Intra-cyclic velocity variation in swimming
Journal of Sports Science & Medicine, 2006

Toussaint, H. M.
Power production and efficiency in swimming
European Journal of Applied Physiology, 2002

Mason, B. R., et al.
Intra-cyclic velocity variations in breaststroke swimming
Procedia Engineering, 2011

Vizsolyi, P., et al.
Breaststroker’s knee: an analysis of epidemiological and biomechanical factors
The American Journal of Sports Medicine, 1987

Schleihauf, U.
A hydrodynamic analysis of swimming propulsion
Swimming III, 1979

Chollet, D., et al.
Arm to leg coordination in elite breaststroke swimmers
Journal of Sports Sciences, 2000

McLeod, I.
Swimming Anatomy
Human Kinetics, 2010

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