【背泳ぎ編】背泳ぎの水泳バイオメカニクスータイムを上げるために知っておきたいこと

shiroです。今回も水泳バイオメカニクスという名の泳法解説【背泳ぎ編】です!

背泳ぎなんてただのクロールを反転しただけの泳ぎ、と思っている方いらっしゃいませんか?

しかし実際には

  • 呼吸が常にできるからこそタイミングが重要
  • 肩関節の動きが可動域の最大に近い
  • 他の泳ぎとは異なる姿勢(仰向け)での姿勢制御が必要

という特徴を持った繊細で難しい泳ぎです。

水泳において、フォームを改善するためには

・どこで推進力を生んでいるのか
・なぜフォームが崩れるのか

ここを知っておく必要があります。

本記事では、論文ベースで

・動作(事実)
・ なぜそうなるのか(解釈)

を分けながら解説していきます。

背泳ぎのストローク相

背泳ぎについても、クロールと同じように1ストロークを分解して考えます。

  • エントリー
  • キャッチ
  • プル
  • フィニッシュ
  • リカバリー

●各局面の役割

ここでは各局面を論文をベースに、
論文が言っていることと、そこに私の解釈を交えて解説していきます。
※背泳ぎ単体の研究が少なく、水泳全般に対する論文も含まれています。

◆エントリー

論文からわかること

・小指側から入水し、肩関節は屈曲位で水面に進入することが一般的
(Maglischo EW, 2003)※レビュー

・入水直後は推進力はほとんど発生しない
(Toussaint HM, 2002)※クロール中心研究だが推進力の時間変化は泳法間で共通とされる

→この局面は推進を生む局面ではなく、
 ストロークの初期条件を決定する局面
であり、入水位置がずれると、その後のキャッチ・プルすべてに影響することになる

◆キャッチ

論文からわかること

・背泳ぎにおいて手部は外側から内側へ向かう軌道を持つ
(Rouard AH, Billat VL, 1990)

・水を捉える初期局面では推進力はまだ小さい
(Toussaint HM, 2002)※クロール研究だが時間変化の傾向として援用

→この局面は推進力を生むというより
 水を捉える準備段階であり、進行方向を決定する最重要局面

ハイエルボーについて

背泳ぎにおけるハイエルボーとは少し矛盾しているようですが、

手が肘よりも上にあること

を意味し、「肘を立てる」ということが重視されます。
ハイエルボーが形成されない場合、水を押す方向が崩れ、推進効率が低下する

◆プル

論文からわかること

・背泳ぎでは手部が後方へ移動するにつれて速度が増加する
(Psycharakis SG, 2008)

・推進はストローク後半で最大になる傾向
(Toussaint HM, 2002)※クロール研究だが推進力時間変化の基本特性として援用

→プル後半からプッシュにかけて
 推進力が最大となる主要局面

筋活動については背泳ぎ単独の研究が見つからず、筋活動のピークは不明です。
しかし、クロールとバタフライにおいては広背筋と大胸筋が推進に大きく関与しており、背泳ぎについても、

広背筋主体の後方押し出しが重要

であると推測できます。

◆フィニッシュ

論文からわかること

・推進力はストローク後半でピーク後に減少する
(Toussaint HM, 2002)※クロール研究

→この局面は
 推進を増やす局面ではない

かといって適当にやってしまうと水の抵抗が増え、速度低下の要因になりえます。

ローリング(体幹回旋)の役割

論文からわかること

・背泳ぎでも体幹回旋はストロークと同期する
(Seifert L, 2007)

・肩関節負担軽減と関連
(McCabe RA, 2011)

→ローリングは

● 可動域確保
● 出力向上
● 障害予防

を担う必須要素であり、不足すると肩関節が開いた状態のまま水をかく(=負荷)ことになる
→肩前方のストレス増大が考えられる

キックの役割

キックについてはクロールとほとんど同じですが、大きく異なるのが

アップキックとダウンキックが逆

であることです。

背泳ぎに集中した研究は未だなく、詳細は不明ですがクロールへの研究から、アップキックが推進に寄与していると考えられます。

背泳ぎと障害との関連(特に腰)

背泳ぎはクロールと似た動作である以上、反復的なストレスがクロール同様肩に負担をかけることも多くあります。

しかし、肩についてはクロール編で解説しているため、今回は「腰」について言及していこうと思います。

これは実体験なのですが、知り合いの背泳ぎの選手で、腰椎分離症になってしまった方がいるのですが、その方は腰が落ちており、上半身が上がったフォームでした。

理学療法士の方がその動作を分析し、評価を行うことで、原因はおそらくお尻の筋肉が弱いことによる腰の沈みであるということになり、リハビリテーションを行うことで実際にフォームも改善されました。

この選手のようなフォームで泳いでいる選手は私のチームでも散見されます。原因がお尻の筋肉の弱さだけではないとは思いますが、背泳ぎが腰に与えるストレスというものは間違いなくあると考えられます。

実際に論文においても、競泳選手に腰痛は一定頻度で発生する(Wolf BR et al., Am J Sports Med)ということが示されており、他の研究でも、水泳という動作において、体幹安定性の低下が腰部負荷を増大させる可能性が指摘されています。(Hibberd EE et al., J Athl Train

腰の障害としては、先ほどの事例の腰椎分離症や椎間板ヘルニアが有名かと思います。これらは論文では以下のことが分かっています。

  • 腰椎分離症は
    反復的な腰椎伸展+回旋ストレスで発生
    (Standaert CJ et al., Clin Sports Med
  • 椎間板には
    繰り返しの圧縮+剪断力が関与
    (Adams MA & Dolan P, Spine

●ここからの私の解釈(推測も含む)

◆腰部沈下 → 何が起きるか

背泳ぎにおいて、もっとも多いエラーが

腰が沈むこと=腰部沈下

だと感じます。
しかし、この姿勢になると、上半身や頭部を駆使してどうにか浮こうとしてしまいます。
その結果脊柱でつながっている腰にしわ寄せが行き、腰部沈下が起きてしまいます。

この意図しない姿勢はコントロールが難しく、そんな中でストロークやキックによるねじれが繰り返し起こると疼痛や障害が起こってしまうのではないかと思っています。

まとめ

今回は水泳バイオメカニクスの【背泳ぎ編】ということで背泳ぎについて、どのような体の動きが起こっているのかを詳しく解説しました。

もちろんクロールと似ている部分は多いですが、背泳ぎの身体の使い方をもっとよく知ることで、背泳ぎがもっと泳ぎやすく、より早くなれると思います!

次は平泳ぎ編になります。祖寺についてもぜひご覧いただけると嬉しいです!

参考文献

Maglischo, E. W. (2003). Swimming Fastest. Human Kinetics.

Toussaint, H. M., & Beek, P. J. (1992). Biomechanics of competitive front crawl swimming. Sports Medicine, 13(1), 8–24.

Toussaint, H. M., Truijens, M. J., Elzinga, M. J., van de Ven, A., de Best, H., Snabel, B., & de Groot, G. (2002). Effect of a fast-skin ‘body’ suit on drag during front crawl swimming. Journal of Biomechanics, 35(10), 1345–1352.

Rouard, A. H., & Billat, V. L. (1990). Influences of sex and level of performance on freestyle stroke mechanics. International Journal of Sports Medicine, 11(2), 150–155.

Psycharakis, S. G., & Sanders, R. H. (2008). Shoulder and hip roll changes during 200 m front crawl swimming. Journal of Sports Sciences, 26(14), 1537–1544.

Seifert, L., Chollet, D., & Chatard, J. C. (2007). Kinematic changes during a 100-m front crawl: Effects of performance level. Journal of Sports Sciences, 25(10), 1149–1157.

Pink, M., Perry, J., Browne, A., Scovazzo, M. L., & Kerrigan, J. (1991). The normal shoulder during freestyle swimming: An electromyographic and cinematographic analysis of twelve muscles. The American Journal of Sports Medicine, 19(6), 569–576.

McCabe, R. A., Uhl, T. L., & Shapiro, R. (2011). Upper extremity kinetics and kinematics of backstroke swimming. Journal of Strength and Conditioning Research, 25(11), 3105–3112.

Bak, K., & Faunø, P. (1997). Clinical findings in competitive swimmers with shoulder pain. The American Journal of Sports Medicine, 25(2), 254–260.

Hibberd, E. E., Myers, J. B., & Oyama, S. (2016). Association between core endurance and shoulder pain in swimmers. Journal of Athletic Training, 51(10), 842–849.

Wolf, B. R., Ebinger, A. E., Lawler, M. P., & Britton, C. L. (2009). Injury patterns in Division I collegiate swimming. The American Journal of Sports Medicine, 37(10), 2037–2042.

Standaert, C. J., & Herring, S. A. (2000). Spondylolysis: A critical review. Clinical Sports Medicine, 19(4), 713–728.

Adams, M. A., & Dolan, P. (1995). Recent advances in lumbar spinal mechanics and their clinical significance. Spine, 20(24), 2615–2621.

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