フォーム改善のための必須知識!水泳バイオメカニクス【総論編】

shiroです。春のJO真っ只中ですね。引率は他のコーチが言っているので、速報が待ち遠しいです。

さて、今回から水泳バイオメカニクスというテーマで記事を5回に分けて書いていきます。

第1回は水泳バイオメカニクスについての総論について、第2回からは各泳法(クロールからバタフライまで)をそれぞれ解説していきたいと思います。

水泳バイオメカニクスとは?

そもそもバイオメカニクスとは、生物の身体の構造や動作を力学の観点から解析・解明する学問のことで、理学療法の世界では解析されたもの自体をさすこともあるように思います。

例えば「椅子から立ち上る」ってなんの意識のもせず行うことだと思います。しかし、その一連の動きを

身体を前に傾ける→お尻を浮かせる→身体を起こしてまっすぐ立ち上がる

という風に分解し、離散的にとらえることで各部分においてどの筋肉が主に使われているのか、どんな軌道で関節が動いているのか、何のための動きなのか等のそれぞれの要素に解釈を与えます。

こういったバイオメカニクスは臨床における評価(検査)や治療プログラムの選択へ応用され、再現性のある改善を可能にしています。

したがって、水泳においてもこのバイオメカニクスを知ることで、

  • 泳ぎを分析しやすくなる→直すべきポイントが明確になる
  • 各動作の意味を知ることができる→練習効率向上の可能性
  • 怪我をしやすい動きとその原因が分かりやすくなる→怪我の予防策を打てる

といったメリットが考えられます。

複数の局面に分けて理解するための枠組みこそが本質であり、個別の検討ができることがバイオメカニクスを知ることであると考えています。

ex)クロールのストロークの分解

本記事では、水泳バイオメカニクスを論文などをもとに整理し、各泳法を理解するための前提を示します。

水泳の速度はどうやって決まるのか

この問いに対する回答はズバリ、

どれだけ減速を抑えられるか

です。

水泳は飛び込み台を蹴る瞬間が最も速く、ターンの際に壁を蹴る瞬間が2番目に速い競技です。つまり基本的には原則をし続ける競技となります。したがってその減速を最も少なくできる泳ぎが速い泳ぎにつながります。

速度に影響を与える因子は以下の2つに大別されます。

推進力:身体を前方へ進める力
抵抗:進行方向と反対に働く力

これらは常に同時に存在しており、速度はその差として表現されます。

したがって、推進力を高めることと同時に、
抵抗による減速を最小限に抑えることが必要になります。

●推進力はどのようにして生まれるのか

◆力の方向という視点(ベクトル的視点)

推進力は基本的に歩行と同様に

ピッチ(ひとかきの速さ)×ストローク長(ひとかきで進む距離)

で規定されるというのが通説です。

したがって、ここを強化すれば推進力を高めることはできます。しかしこの理論にはとある前提が隠れています。それは

力を加える方向が正しいこと

です。

水中では手や足で押した方向と反対に身体が進みます。そのため、前方の推進に寄与する方向に力を加えていなければ不要な身体の動きが生まれ、後述する抵抗を増やす原因になります。

◆キャッチの重要性

ストロークの中でも、最初に水を捉えるキャッチ局面は、
その後の推進効率を決定づける重要な局面です。

キャッチで適切に水を捉えられない場合、
その後の動作でいくら力を発揮しても、前方への推進にはつながりにくくなります。

(※この点についてはクロール編で詳述します)

●抵抗をどのように扱うのか

よく水の抵抗と称されるこの抵抗ですが、競泳において最大の敵と言ってもいいくらいに主要な、動作の制限因子であり、主に3つに分類されます。

・形状抵抗
  →体型や姿勢等に依存。体の前後にかかる圧力差によって生まれるため、圧力抵抗とも言う。
・摩擦抵抗
  →水との接触面積や接触する物体の摩擦係数等に依存。粘性抵抗とも言う。
・造波抵抗(水面での動き)
  →前進の過程で押しのけた水の量(波)によってできる抵抗。泳ぐスピードに依存する。

特に波抵抗は水面付近で増大するため、
身体の位置や上下動のコントロールが重要になります。

また、抵抗は
空中 < 完全水中 < 水面付近
の順に増加するため、どの環境で動作するかも重要な要素となります。

4泳法の共通点と違い

共通する原理

クロール・背泳ぎ・平泳ぎ・バタフライは、それぞれ動作は異なりますが、
本質的には以下の原理に基づいています。

推進力の獲得&抵抗の最小化

●何が違う?

一方で、それぞれの泳法には

・関節可動域の使い方
・力の発揮方向
・動作のタイミング
・ルール上の制約

といった違いがあります。

したがって、4泳法は「異なる技術」ではなく、
同じ原理を異なる条件のもとで表現したものと捉えることができます。

フォームと障害

●誤用×過用

慢性的なスポーツ障害は
誤用(不適切な運動パターン)と過用(反復的負荷)によって生じます。

水泳は反復運動であるため、フォームのわずかなずれが存在する場合、過用の程度か低くても負荷が蓄積しやすくなります。

実際にクロールでは、肩関節への反復的なストレスが大きく、フォーム不良は障害リスクを高めることが報告されています。

まとめ

水泳を速くするために重要なのは

・推進力を高めること
・抵抗を減らすこと

です。

そしてそのためには、
各泳法の動作を分解し、それぞれの局面で何が起きているのかを理解することが不可欠です。

バイオメカニクスは、その理解を可能にするための手段です。
本シリーズでは、この視点から各泳法を個別に整理していきます。来週はクロール編です。

参考文献

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